炎症を繰り返す腸の病気 長期にわたり腹痛や下痢に悩まされる

炎症を繰り返す原因不明の病気「潰瘍性大腸炎」「クローン病」

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、原因が明らかにされていないので、残念ながら、現在のところ根治療法はありません。そこで、まずは炎症によって症状が起こっている「活動期」から、炎症がないか、あってもごく軽い「緩解期」という状態に導くことが治療の目的になります。
炎症が抑えられ、日常生活に支障がないほどに症状が出なくなれば、ひと安心です。また、いったん緩解期に入っても、再び活動期に戻ってしまうことがあります。これを「再燃」といいます。緩解期を長く維持し、再燃を防ぐことも、治療の目的の1つです。

  • 薬物療法・食事療法でコントロール
    治療では、薬物療法と食事療法を併用し、炎症をコントロールしていきます。
    薬物療法では、炎症を抑える「5-ASA製剤」が基準薬として広く使われています。比較的安全性が高く、緩解期の服用にも適しています。
    ふくそれに加えて、炎症と免疫の働きを抑える「副腎皮質ホルモン薬」や、免疫の働きを抑える「免疫抑制薬」が使われることもあります。
    特に活動期には、効果の強い副腎皮質ホルモン薬を使うことが多いのですが、骨がもろくなるといった副作用があるため、緩解期の維持には、免疫抑制薬が選択されることもあります。
    これらの薬を使用することで、8~9割の人が症状をコントロールすることができます。
  • 栄養価の高いものを食べる
    活動期には、下痢による体力の消耗を防ぐために、白身魚や鶏肉、大豆、卵など、良質のたんばく質をとるように心がけます。
    また、腸に余計な刺激を与えないために、食物繊維や脂質香辛料やコーヒー、アルコールなどの刺激物を避けるようにします。
    緩解期は、暴飲暴食に気をつけてバランスのとれた食事をしていれば、特に問題はありません。
  • 手術が行われる場合も
    薬物療法で効果が得られない場合などは、手術が検討されます。
    手術では、大腸全体を切除し、小腸を使って袋をつくり、大腸の代わりにします。以前は、肛門もすべて切除して人工肛門をつくっていましたが、現在では肛門を残せるようになっています。
  • 手術が適用されるケース

    薬が効かない他に、「大量出血が見られる場合」「中毒性巨大結腸症」「大腸が破れた場合」「ガンの疑いがある」場合などです。治療技術の進歩により、昔に比べて患者さんのQOLは向上しましたが、その一方で、排便の回数が増えたり、再建した腸に炎症が起こるなどの問題も残こってています。

クローン病

腸はじめ消化管に潰瘍や炎症が起きる

消化管は、口から始まり、食道や胃、腸を経て肛門に至る長い管です。この消化管のどこかに炎症が起きるのがクローン病です。なかでも多いのが、大腸へと続く小腸の末端部分で、病変部と病変部の間に、健常な部分があるのが特徴です。
発症のピークは男性が20~24歳、女性が15~19歳で、女性より男性に多い傾向があります。

主な症状

特徴的なのは、腹痛と下痢です。「発熱、下血、体重減少、貧血」などの症状がみられます。ひどくなると、「痔ろう」ができることもあります。
「痔ろう」とは
クローン病による腹痛や下痢などの症状があっても、自分1人で抱えこんでしまうことがあります。中高生では、腹痛のために学校を休むと、ずる休みと誤解されるケースもあります。

栄養療法や薬物療法が中心

クローン病の治療は、炎症を抑えて緩解期に導き、緩解期をできるだけ長く維持することです。
海外では行われませんが、日本で一般的に行われているのが、栄養療法です。食事の代わりに、アミノ酸や糖質を主体とした「成分栄養剤」を摂取する治療法です。腸を休ませると同時に、食事からの異物の侵入を防ぐことができます。
症状が落ち着いてきたら、栄養剤を減らし、食事の割合を増やしていきます。また、薬物療法が行われることもあります。
潰瘍性大腸炎と同様、5-ASA製剤が基準薬として使われます。さらに、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬などが使われることもあります。
最近では、炎症を起こす物質(TNFlα)を抑える「抗TNF-α抗体」という薬も使われ始め、期待を集めています。非常に効果が高く、海外では一般的になっています。ただ、まだ歴史の浅い薬なので、長期使用した場合の副作用がわかっていないなどの問題も残されています。

日常生活での注意点

日常生活では、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠、規則正しい生活など、腸のトラブルをできるだけなくすような生活が原則となります。
また、当然ですが、自分の病気についてよく理解し、担当医とよく話し合いながら、治療を受けるようにしましょう。家族や友人、学校の先生、会社の同僚や上司など、周囲の人から病気について理解を得ることも大切です。

サブコンテンツ

このページの先頭へ